Denso Manufacturing Czech社、Visual Componentsのシミュレーションによりリークテストのスループットを向上

Denso Manufacturing Czech社は、Visual Componentsを使用して熱交換器における重要なリークテストラインのシミュレーションを行い、最適化を実現しました。新しい搬送経路をデジタルツインで事前に検証することにより、自動テスターの稼働率やラインの安定性が向上。こうした取り組みを、すべて現場で実際に変更を加える前に行いました。

熱交換器のテストライン

株式会社デンソーは、世界最大級の自動車部品サプライヤーです。エンジン部品から空調設備まで、あらゆる製品を手がけています。中でも、チェコにあるDenso Manufacturing Czech社(DMCZ)では、自動車用エアコンユニットやヒーター部品を専門に扱っています。Digital Twin TraineeであるJaroslav Živnůstka氏のチームは、重要な品質プロセスの改善を担うこととなりました。それは、熱交換器のヘリウムリークをテストするラインです。

手作業による搬送経路の限界

DMCZにおける熱交換器の生産プロセスでは、すべての製品がHTR#2ラインでヘリウムリークテストに合格する必要があります。このラインは、複数のテストステーションで構成されています。従来、部品は種類ごとに決められたテスターへ振り分けられていました。異なる製品バリエーションごとに、1つずつ別のステーションが割り当てられるのです。割り振りが決まっているため、現場スタッフが指定されたテスターまで手作業で部品を運ぶ必要がありました。理論的には、決められた種類の製品のみが各テスターで処理されることになります。しかしこれでは柔軟性に欠け、効率性の低下につながっていました。たとえば、ある製品の需要が急増したり、テスターが停止したりすると、他に使われていないステーションがあったとしても、ボトルネックが生じてしまいます。隣のテスターが空いているにもかかわらず、1台の機械に大量の部品が滞留してしまうことも少なくありません。搬送を手作業で行っており、融通が利かないため、変化に弱い状態になっていたのです。そのため、状況の変化に応じた作業の平準化が難しく、ボトルネックが生じ、設備の稼働率も低下していました。

「製品ごとにテスターを機械的に割り当てるのではなく、各ステーションの負荷を自動で平準化する、柔軟な搬送経路のロジックを構築することが目標でした。従来の仕組みでは、需要の変動やプロセスの停止が発生するたびに、ボトルネックが生じていました。リアルタイムで対応でき、すべてのテスターを常に稼働させ続けられるシステムが必要だったのです。」

Denso Manufacturing Czech社、Digital Twin Trainee、Jaroslav Živnůstka氏

改善の余地があるということを、Jaroslav氏はわかっていました。1日あたりの生産量が多いため、効率がわずかに落ちるだけでも大きな生産機会の損失につながります。そこで考案されたのが、状況に合わせた流動的なシステムを構築するというアイデアでした。製品の種類によって搬送経路を固定するのではなく、リアルタイムの空き状況に応じ、各部品を空いているテスターへ割り振れないかと考えたのです。つまり、3種類のテスターごとにそれぞれ部品を待機させるのではなく、一本化して常に空いたテスターへ割り振るという仕組みです。このアプローチであれば、テスターの待機時間が解消され、部品の滞留も防ぐことができると期待されました。すべての機械で負荷を平準化することで、実質的にボトルネックを解消できます。しかし、上手くいく確証が持てないままこのロジックを稼働中の生産ラインに実装するのは、大きなリスクを伴います。他の型式の熱交換器でも、適切にテストできるのか。制御システムは、流動的な搬送経路に対応できるか。そして、コンベヤーの再構築やPLCコードの書き換えを行う前に、期待されたメリットが得られるかを確認する必要がありました。

よりスマートな振り分けシステムのシミュレーション

変更に伴うリスクを抑えるためにJaroslav氏が活用したのが、シミュレーションです。Visual Componentsの3D製造シミュレーションプラットフォームを使い、HTR#2リークテストライン全体の詳細なデジタルツインを構築しました。コンベヤー、テスター、空き状況を検知するセンサー、リークテストラインのロジックまで網羅されたものです。モデル化の範囲は、現行のプロセスのほぼすべての要素に及びました。熱交換器のバリエーション、投入頻度、リークテストごとのサイクルタイム、さらには投入作業における現場スタッフの動きまでが再現されました。ラインを仮想空間で再現することで、新たに構築されたスマートな振り分けロジックを安全な環境で試すことができました。これにより、実際の生産を止めることなく、システムの挙動を確認できたのです。

シミュレーションでは、アルゴリズムを用いて流動的な振り分けを実現しました。あらかじめ経路を決めるのではなく、空いているテスターや待ち時間が短いテスターへ、投入される部品が1つずつ振り分けられるのです。Visual Componentsはオープンプラットフォームです。そのためJaroslav氏は、空き状況を検知するセンサーとあわせてこの搬送経路のロジックをスクリプト化し、実際に動作するところまで確認できました。このデジタル上のラインで、さまざまなシナリオの検証が行われました。通常の生産量ではどうか。ピーク時に最大まで部品が滞留した場合の限度はどの程度か。さらにはテスター1台のダウンタイムをシミュレーションで再現し、どのように対応するかも確認しました。デジタルツインを活用することで、新しい手法を何度も試し、問題が見つかるたびにすぐにロジックを調整することができたのです。

仮想空間で試行錯誤することで、ソリューションに対する信頼も深まりました。対応していないテスターに部品が割り振られないよう、制御ルールの微調整も行われました。一部のステーションには、特定の型式向けの専用治工具やキャリブレーションが設定されているためです。このシミュレーションの段階で、振り分けロジックを十分にテストすることができ、あらゆる条件下でラインを稼働させ続けられるようになりました。実際のラインでダウンタイムや物理的な変更を生じさせることなく、デジタル空間で新しいプロセスのデバッグと最適化を終えることができたのです。

よりスムーズなラインとスループットの向上を実現

「シミュレーションプログラムのおかげで、システムへの理解が深まりました。また、実際にエラーを起こすことなく、理論上の知識を実務の中で確認できました。さらに、ソリューションの機能も説明しやすくなり、わかりやすく可視化して見せられるようになりました。」

Denso Manufacturing Czech社、TIE Specialist、František Manlig氏

シミュレーションの結果を見れば、流動的な振り分けというアプローチのメリットは一目瞭然でした。これまで低かった自動テスターの稼働率が、大きく改善したのです。搬送経路が平準化されたことで、最も使用頻度の高いテスターでは、1時間あたり約70個多くの部品を処理できるようになりました。同時に、これまで各ラインに手作業で製品を運んでいた現場スタッフの役割も整理されました。作業の大部分を、コンベヤーによる自動振り分けに任せられるようになったのです。現場スタッフは製品の搬送経路の管理から解放され、品質チェックなどの業務に注力できるようになりました。これにより、全体としてラインの流れがスムーズになりました。各テスターで部品が滞留することなく、安定して流れていきます。シミュレーションでは、1台のテスターに負荷が集中し、他が待機状態のままになることはほとんどなくなりました。

また、デジタルモデルから得られたデータにより、スループットだけでなく安定性の面でも改善が見られることがわかりました。3台のテストステーションのサイクルタイムは均等になり、稼働率のばらつきも大幅に軽減されたのです。これは、すべての設備がほぼ最大限の性能で活用されていることを示しています。製造現場の観点から見ると、プロセスがより平準化されたことになります。こうした知見をシミュレーションの段階で得られたことで、実際のラインでの試行錯誤を避けることができました。最適な制御方法やレイアウトの調整を事前に確認できたため、実際に導入する段階でも、想定外の事態はほとんど起こりませんでした。

「シミュレーションにより、実際のラインに手を加える前に、プロセスの変更内容を確実に評価できました。複数の生産シナリオをスピーディーに比較し、さまざまな条件下でシステムがどのように動くかを確認できたのです。これにより不確実性が減り、意思決定のスピードが上がるだけでなく、自信を持って改善を実施できるようになりました。」

Denso Manufacturing Czech社、Technology Supervisor、Michal Humpolák氏

また、シミュレーションにより、工場の他の関係者から協力を得られたという点も重要なポイントでした。色分けされた熱交換器が空いているテスターへ次々と流れていく3Dモデルを見れば、誰もが新しいコンセプトを具体的にイメージできました。抽象的なアルゴリズムではなく形のあるシステムとして、仮想空間で実際に確認できるようになったのです。これにより、経営層にも現場スタッフにも変更内容を伝えやすくなりました。新しいプロセスがどのように機能し、どのような利点があるかを、全員が理解できるようになりました。

デジタルツインから実際の改善へ

「さらなるプロジェクトとして、Visual Componentsのソフトウェアを活用し、HTRラインでの実装を続けていきたいと考えています。現場スタッフの業務を整理する予定であるため、作業する現場スタッフにどの程度影響があるかを確認する必要があるのです。現時点では、作業姿勢や負荷といった人間工学的な観点や、局所的な筋肉への負担に重点を置きたいと考えています。こうした要素は、個々の作業ポジションに応じた作業区分の判定にも影響します。そのため、必要な変更に着手する前に、Visual Componentsで変更内容を評価したいと考えています。」

Denso Manufacturing Czech社、Production Engineering Section Manager、Vilém Bartoň氏

Jaroslav氏のチームでは、コンセプトを仮想空間で実証したうえで、実際のHTR#2ラインに変更を加えていく予定です。Visual Componentsで開発した振り分けロジックは、ラインのPLC(Programmable Logic Controller)向けに書き換えられます。シミュレーション上のアルゴリズムは、実機のコンベヤーと仕分けゲートを制御する機械語へ置き換えられることになります。

プロジェクトにおける当面の目標は、自動化を進め、従来の手作業による仕組みが抱えている課題を解消することでした。今後に向けて、さらなるスループット向上も視野に入れられています。さらに改善を重ねれば、将来的にリークテストライン全体で、1日あたりのスループットを21,000個まで引き上げられると見込まれています。これを達成するには、将来的にさらなる最適化や並列化が必要になる可能性もあります。ですが、今回新たに考案された柔軟な振り分け手法は、目標達成に向けた重要な第一歩になります。さらに重要なのは、ラインに高い適応性を持たせることができたという点です。生産需要の変動や熱交換器の型式の追加にも、流動的な搬送経路のロジックにより、最小限の変更で対応できます。また、ラインに加える変更を検証する際には、Visual Componentsで構築したデジタルツインを再利用することも可能です。

Visual Componentsについて

Visual Componentsはシミュレーションの専門家チームによって設立され、20年以上の歴史を持つ3D製造シミュレーション業界のパイオニアです。数々の主要ブランドから信頼される技術パートナーであり、製造プロセス設計とシミュレーションを実現するシンプルで迅速、かつコスト効率の高いソリューションや、高速で正確、かつエラーのない産業用ロボットのティーチングを支援するOLP(ロボットオフラインティーチング)技術を、機械メーカー、システムインテグレーター、製造業者に提供しています。

当社のソリューションを活用するメリットについて詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Denso Manufacturing Czech社の事例についてのFAQ

デジタルツインとは、物理オブジェクトや設備の仮想モデルです。対象の挙動や性能をコンピューター上で再現するために使用されます。製造現場では、デジタルツインにより生産ライン全体を再現することも、機械1台のみを再現することも可能です。センサーや実際のデータをデジタルツインに取り込むことで、正確に再現できます。

自動化されたラインにおいて、振り分け装置とは製品を異なる経路へ振り分ける機構(機械そのものや制御ロジック)を指します。コンベヤー上で部品の交通整理をするようなものとお考えください。流動的な振り分け装置とは、搬送経路が固定されていないものを指します。空いているテスターまたは最も余裕のあるテスターが、その場で選択されます。ダイバーターコンベヤーのような物理的な装置を指すこともあれば、単に制御ソフトウェアにおけるロジック上のルールを指す場合もあります。

シミュレーションは、問題を実際に起こる前に発見するうえで大きな効果を発揮します。ラインのボトルネック、機械の待機状態、新しいプロセスに最適なレイアウトの検討など、シミュレーションを使えば、実機のテストによるリスクやコストを伴うことなくアイデアを検証できます。

製造シミュレーションソフトウェアは、生産システムのデジタルモデルを作成し、レイアウト、ロボット動作、資材の流れ、サイクルタイム、スループットといった主な指標を、実際に構築する前に検証できるソフトウェアです。

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大きな変更だけに限られません。大規模なプロジェクトで効果を発揮するのはもちろんのこと、バッファーサイズの調整、新しいシフトパターンの検証、振り分けの細かな変更のテストなど、小規模な調整にも役立ちます。小さな改善も、積み重なれば大きな成果につながります。

必ずしも必要ではありません。Visual Componentsを含め、昨今のシミュレーションツールの多くは、コーディング経験のないエンジニアや生産計画担当者でも使用できるように設計されています。視覚的なインターフェースやドラッグ&ドロップによるツールを使用することで、シナリオの作成、検証、分析を行えます。

Akseli Taimi

Visual Components、Product Marketing Manager

Akseli Taimiは、Visual ComponentsのProduct Marketing Managerです。市場進出戦略や製品プロモーションを担当し、新機能の位置づけをわかりやすく伝えるとともに、ソフトウェアが生み出す価値により、製造現場における実際の課題を解決することを目指しています。